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〈救急総合診療科〉山田 太平 医師

ドクターズ・インタビュー〈救急総合診療科〉山田 太平 医師

救急医療と総合診療を通じて、地域に必要とされる診療科へ

このたび、神戸百年記念病院に着任いたしました救急総合診療科の山田太平です。私は兵庫医科大学を卒業後、同大学病院で初期研修を行い、救急・災害医学講座および救命救急センターで、救急医としての基礎を学びました。その後、岡山大学病院高度救命救急センターで経験を重ね、再び兵庫医科大学へ戻り、救急・災害医学講座の准教授として勤務してまいりました。これまで約20 年にわたり、三次救急の現場で重症患者さんへの対応、外傷診療、災害医療などに携わってきました。その経験を、当科の診療体制の構築に生かしていきたいと考えています。

救急医としての原点となった福知山線脱線事故

私にとって救急医療を深く考える大きなきっかけとなったのは、研修医として働き始めた直後に経験したJR 福知山線脱線事故でした。事故現場に最も近い救命救急センターは兵庫医科大学病院であり、100 名以上の患者さんが搬送されるという、これまで経験したことのない状況に直面しました。当時の私は、十分な治療ができる立場ではありませんでしたが、医師として、今この瞬間に動かなければならないとの思いを強く抱きました。立ち尽くすのではなく、できる範囲で動くこと。その経験が、外傷診療や災害医療に向き合い続ける原点になっています。

学び続け、支え合うチーム医療を大切に

救急医は、幅広い知識とその場で判断する力が求められる仕事です。資格は取得して終わりではなく、医療の進歩に合わせて、技術や知識を更新し続けなければなりません。患者さんを診ること、教科書から学ぶことに加えて、院内外で多くの人と出会い、学びの場を求め続けることを大切にしてきました。
一方で、救急医療は一人で完結しません。必要に応じて他の診療科や多職種の力を借りながら診療を進めること、そして救急医として助けを求められたときには、できるだけ早く駆けつけること。そうした持ちつ持たれつの関係性が、患者さんを支える力になります。
当院の救急総合診療科では、中村医師、原医師、古郷医師らとともに、新しい診療体制づくりを進めています。重症患者さんへの対応では、瞬時の判断が求められます。一方で、救急の現場だからこそ、慌てず、落ち着いて、淡々と目の前のことに向き合う力も欠かせません。医師、看護師、検査技師をはじめ、多くの医療スタッフにはそれぞれ異なる強みがあります。その強みを見いだし、互いに補い合えるチームをつくることが、患者さんにとってよりよい医療につながると考えています。

災害医療で培った「いざというときに動く力」

私はこれまで、令和6 年能登半島地震、トルコ・シリア地震、平成28 年(2016 年)熊本地震、東日本大震災など、国内外の災害医療にも関わってきました。東日本大震災ではDMAT 隊員として本邦初の広域医療搬送に携わり、被災地の医療機関にかかる負担を減らすため、自衛隊機を用いて患者さんを被災地外へ搬送する取り組みにも参加しました。また、NGO「空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”」での活動にも携わり、災害発生直後に現地へ入り、救助や医療支援につなげる現場も経験してきました。NGO には、必要と判断したときにいち早く動ける機動力があります。真っ先に現地へ入り、状況を把握し、その後のDMAT などの公的な医療支援につないでいくことも、災害医療における大切な役割のひとつです。
こうした災害医療の経験をもとに、NHK の防災教育番組「学ぼう BOSAI」「キミも防災サバイバー!」や、同局の「クローズアップ現代」などに出演し、災害医療や防災についてお伝えする機会もありました。
現在も、消防、警察、自衛隊の関係者や、医師、看護師をはじめとする医療スタッフとともに、実際の災害現場に近い形の訓練に継続して取り組んでいます。災害医療や救急医療は、テレビドラマのように派手ではなく、日頃から淡々と技術を磨き、いざというときに落ち着いて動けるよう準備することが大切です。その実践力を、当院の救急医療にも還元してまいります。

救急医療・総合診療・地域医療・災害医療・国際医療をつなぐ

当科では、救急医療、総合診療、地域医療、災害医療、国際医療を柱に、これからの地域に必要な医療を形にしてまいります。三次救急で重症患者さんを診る力と、二次救急で地域の幅広いニーズに応える力の両方を備えることが、救急医には欠かせません。 また、少子高齢化が進む中では、高血圧や糖尿病、脳卒中後の後遺症など、さまざまな背景を持つ患者さんを、日常生活の延長線上で診ていく総合診療の視点も重要になります。病院の外で起こる体調の変化にどれだけ早く、適切に向き合えるか。その姿勢を大切にしながら、地域の皆さまにとって相談しやすい診療科を目指してまいります。
救急医療は「助ける」ことを前提とする医療ですが、医療には限界があるのも事実です。だからこそ、できるだけ命を救うための技術を磨くことに加え、苦痛を和らげ、ご家族の思いを確認しながら、最期の時間に寄り添うことも、救急総合診療科の大切な役割です。何も手立てがないからといって、何もしないのではなく、患者さんとご家族にとって少しでも穏やかな時間を整えることも医療のひとつです。助ける技術と寄り添う技術の両方を磨きながら、地域の皆さまに必要とされる診療科を、スタッフとともに育ててまいります。

医師プロフィール

救急総合診療科部長/救急センター長
山田 太平 (Taihei Yamada)

救急総合診療科 / 救急センター

ドクターズ・インタビュー

専門・得意分野 救急医学、集中治療医学、外傷学、災害医学
略歴 平成16年3月 兵庫医科大学医学部 卒業
平成25年3月 兵庫医科大学大学院医学研究科博士課程 修了
資格・免許 博士(医学)
日本救急医学会指導医
救急科専門医
集中治療科専門医
外傷専門医
災害医療上級ロジスティクス専門家
ICLSディレクター
ISLSプロバイダー
JPTEC近畿世話人
JATECインストラクター
JETECコース修了
AISコーディングセミナー修了
SSTT座学コースプロバイダー
MCLS管理世話人
MCLS-CBRNEインストラクター
MCLS大量殺傷型テロ対応病院コースインストラクター
PhDLS世話人
BHELPインストラクター
DMAT登録者
統括DMAT登録者
DMATコーディネーター
NBC災害・テロ対策研修修了
国際緊急援助隊医療チーム登録者
空飛ぶ搜索医療団“ARROWS”シニアロスター
DMORT養成研修会修了
PFA研修会修了
MIMMSプロバイダー
HMIMMSプロバイダー
J-HELPコース修了
BDLSプロバイダー
FCCSプロバイダー
FDMプロバイダー
BLSOプロバイダー
PEECコース修了
ドクターヘリ講習会修了
医師救急医療業務実地修練修了
病院前医療体制における指導医等研修(上級者)修了
医療機関に所属する救急救命士に対する研修の講師となる人材のための講習会(医療機関に所属する救急救命士の研修を指導する体制整備に関する講習会)修了
臨床研修指導医講習会修了
兵庫医科大学救急・災害医学講座特別招聘教授

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